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不飽和ポリエステル樹脂

不飽和ポリエステル樹脂

不飽和ポリエステル樹脂(単に、ポリエステル樹脂と省略する場合が多い)とは、構成分子の主鎖にエステル結合と不飽和結合を有する化合物の総称で、硬化剤の存在下でモノマーとラジカル重合して高分子化します。
不飽和ポリエステル樹脂は、〔主剤-硬化剤(触媒、開始剤ともいう)-硬化促進剤〕の3成分系に分かれた形態が多いのが特徴です。
主剤には、グリコールと無水マレイン酸、フマル酸などの不飽和二塩基酸を重縮合(不飽和アルキド)させ、これに、希釈剤兼架橋剤の役割をするスチレンモノマーなどを添加した淡黄色液体を、硬化剤には、過酸化ベンゾイル(BPO)やメチルエチルケトンパーオキサイド(MEKPO)を、硬化促進剤には、前者には第3級アミンを、後者にはコバルト系の促進剤などを組み合わせて用います。

一般的な特徴

<長所>
(1)粘度が低く、取り扱いやすい
(2)硬化促進剤の添加量の調整により、可便時間や硬化時間の調整ができる。(硬化が速い)
(3)低温(0℃以下)硬化性が良い
(4)良好な機械的物性を持つ
(5)耐水、耐酸性に強い

<短所>
(1)主剤に対する、硬化剤、硬化促進剤の配合比が小さいため、計量、混合、攪拌に注意を要する
(2)エポキシ樹脂と比較して、硬化収縮が大きい
(3)高温時の可便時間が短い
(4)空気中の酸素により、硬化阻害が生じる。(空気阻害を防止するため、ワックス類を主剤に添加して、樹脂の硬化段階でワックスの膜を樹脂の表面に形成し、空気を遮断するワックス添加型と、原料合成段階で変性した樹脂を使用したノンワックス型がある)
(5)水分による硬化性への影響が大きい。(硬化剤にメチルエチルケトン(MEKPO)を、硬化促進剤に、ナフテン酸コバルトなどを用いた系は、水分の影響が大きい)
利用するに当たっては、これらの特徴(短所)を良く理解することが必要になります。

用途

不飽和ポリエステル樹脂は、粘度が低く、取り扱いやすい、硬化が速く、良好な機械的物性を持つなどの特性を有するため、工場加工や現場施工(加工)など、多種多様に利用されています。

(a)工場加工製品
FRP(Fiber Reinforced Plastics)の結合材(マトリックス)として、船舶、浴槽、浄化槽、化粧版、パイプなど、工場で製造される成型品としての利用が多くあります。

(b)ライニング材(塗料)、FRP接着工法(現場施工)
コンクリートのひび割れ追従性に優れた柔軟タイプのライニング材(塗料)下水道防食塗料(現場でガラス繊維クロスに樹脂を含浸し、貼り付けるFRP接着工法あるいは不飽和ポリエステル樹脂で作られたFRP成形板をエポキシ樹脂接着剤で貼り付ける方法など)があります。

(c)複合材(プラスチックコンクリート・モルタル)の結合材
駅のプラットホームや階段などの滑り止め防止を目的として、コンクリートの下地に、樹脂を塗布し、まだ硬化しないうちに珪砂やカラー骨材などを散布して、ノンスリップ材とする工法です。
プラスチックコンクリート・モルタルの結合材として、工場床(耐酸性樹脂モルタル)や橋梁伸縮継手部の端部材などにも使用されています。

使用上の注意点

ポリエステル樹脂は、急速に硬化することや、空気による硬化阻害などがあるため、以下の項目を特に注意しなければならなりません。

(1)硬化剤は、有機過酸化物であり、危険物第5類に指定されている。また、その形態も、粉末、ペースト、液状と様々である。共通注意点として、火気・加熱・摩擦・衝突をさけ、換気の良い冷暗所に保存する
(2)3成分系の場合には、主剤と硬化剤を混合しただけでは硬化しない。硬化促進剤を必ず添加し、添加量は(気温と可使時間の関係)を調べて決定する
(3)3成分系の場合には、主剤と硬化剤を配合比に従い、均一な混合をした後、硬化促進剤を添加する。同時に加えると、急激に反応し、爆発、火災などの危険性がある
(4)プラスチックコンクリート・モルタルの結合材として使用する場合には、規定量以上の骨材を混合しない。(混合・攪拌時に空気を連行しすぎて、硬化阻害が生じる場合がある)
(5)ワックス添加型は、38℃以上になると、配合中のワックスが硬化樹脂中に融け込んで、表面のべタツキや硬化阻害が生じる
(6)ワックス添加型は、貯蔵中にワックスが分離しているため、主剤を小分けして使用する場合には、主剤を良く攪拌した後、計量する
(7)硬化したワックス添加型のライニング材に、塗り重ねや仕上げ材を塗布する場合には、硬化塗膜表面をサンドペーパなどで目粗しして、ワックスを除去する。FRP接着工法の時は、継ぎ手強度が低下する恐れがあるため、特に注意する
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