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建築構造物のひび割れ補修

 ここでは、建築構造物のひび割れ処理について考えてみましょう。
 
 建築構造物では、タイルや塗装材などによりコンクリート表面が保護されている場合が多く、土木構造物のような苛酷な自然環境に直接曝されることが少ないと考えられます。しかしながら、コンクリートの部材寸法が小さいため、乾燥収縮が早期に進むこと、また、用途上複雑な形態の部材配置となり、拘束応力を受けやすいなどの要因から、多くの建築構造物にもひび割れ発生に伴う補修の必要性が度々生じているのが現状です。特に建築構造物では常時、人が居住しているため、わずかな漏水や美観を損なうひび割れの発生が大きな問題となることがあり、慎重な補修工事の実施が求められています。
 
 建築構造物において行われる補修工事の大半は風雨に曝される外壁が対象となるため、以下に外壁のひび割れ補修工法について考えてみます。
 
 外壁のひび割れ補修方法は、下の図に示すようにひび割れ部の挙動の有無およびひび割れ幅に応じて適切な補修工法を選定するのが一般的です。
 
 竣工後2~3年以上経過した建物における乾燥収縮ひび割れなど、伸展拡大する恐れがない(挙動なし)ひび割れに対しては、パテ状エポキシ樹脂によるシール工法やエポキシ樹脂注入工法により補修します。一方、若材令のコンクリートの乾燥収縮ひび割れや温度ひび割れなどのように今後更にひび割れ幅が拡大したり、環境条件により幅が変動するひび割れに対しては、可とう性エポキシ樹脂によるシール工法またはUカットシール材充填工法を用いるのがいいでしょう。
 
 ①シールエ法
 
 シール工法は、コンクリート表面のひび割れ幅が0.2mm程度未満の小さなひび割れ部の表面をシールする場合に用います。シール材はひび割れ幅が挙動しない場合はパテ状エポキシ樹脂を、ひび割れが挙動する場合は可とう性エポキシ樹脂を用います。補修にあたっては、ひび割れを中心に50mm程度をワイヤブラシ等で表面を清掃し、シール材をパテベラ等で幅10mm、厚さ20m程度に塗布し平滑に仕上げます。可とう性エポキシ樹脂を使用する場合はあらかじめプライマーを使用します。
 
 ②エポキシ樹脂注入工法
 
 エポキシ樹脂注入工法は、コンクリート表面のひび割れ幅が0.2mm程度以上のひび割れにエポキシ樹脂を注入する場合に用います。注入するエポキシ樹脂はひび割れが挙動していない場合はエポキシ樹脂を、ひび割れが挙動している場合は軟質系エポキシ樹脂を使用するのがいいでしょう。
 
 エポキシ樹脂注入工法には手動式、機械式および自動式低圧注入工法があります。注入用パイプの設置間隔はおおむね以下の表の通りです。
 
 ③Uカットシール材充填工法
 
 Uカットシール材充填工法は、コンクリート表面のひび割れ幅が0.1mm程度を超える場合、およびひび割れ幅が挙動する場合にひび割れをU字形にカットし、シール材を充填する工法です。
 
 Uカット部にはシール材を充填する場合と、可とう性エポキシ樹脂を充填する場合とがあります。シール材充填はひび割れの動きが大きいと予想される部位に、可とう性エポキシ樹脂の充填はひび割れの動きが比較的小さい、と予想される部位に用いるのが一般的です。可とう性エポキシ樹脂は仕上がりが良く、補修後に仕上げ塗装材を施工する場合に補修の跡が目立ちにくいですが、長期的な可とう性の保持が課題となります。
 
 
Uカット工法の代表的な一例
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