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エフロレッセンス

 エフロレッセンス(efflorescence)とは、コンクリート中の可溶性物質やコンクリート周辺に存在する可溶性物質が、水分とともに貫通したひび割れを通ってコンクリート表面に移動し、水分の逸散や空気中の炭酸ガスとの反応によって析出したものです。したがって、エフロレッセンスには水分の移動が必要となりますが、水分の移動の仕方によって一次エフロレッセンスと二次エフロレッセンスに分けて説明されることがあります。一次エフロレッセンスは、練混ぜ水など本来コンクリート内に存在した可溶性物質がコンクリート表面で水分の蒸発によって白く見えるようになったもので、建築構造物の打放しコンクリートの壁面などに見られます。二次エフロレッセンスは、地下水や雨水など外部の水が貫通ひび割れやコンクリート表面を移動することによって、コンクリート中の可溶性成分が表面に移動し、ひび割れ周辺などに綿状あるいはつらら状に成長したものです。
トンネル覆工に発生したエフロレッセンス
 エフロレッセンスの組成としては、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)や、これが炭酸ガスと反応した炭酸カルシウム(CaCO3)、さらにはアルカリ成分が二酸化炭素や硫酸塩と反応したアルカリ炭酸塩(Na2CO3など)や、アルカリ硫酸塩(Na2SO4など)から構成されることが多いようです。また、水の成分や環境から供給された成分が含まれることも有ります。エフロレッセンスはその色調から、白華とも称されることも有ります(アルカリ塩の析出を「白華」、カルシウム塩の析出をエフロレッセンスと区別して呼ばれることも有る)。これは、構成している鉱物が微細な粒子であるため、光の屈折や反射によって白色に見えるためです。ただし、周辺環境から供給される物質も含むため、例えば鋼材腐食を伴っている場合には、明褐色のエフロレッセンスとなっている場合が有ります。

構造物へ及ぼす影響

 エフロレッセンスの発生そのものが、コンクリート構造物の耐荷力などの信頼性を大きく低下させるものでは有りません。しかし、エフロレッセンスは水分が移動した結果として現れるため、水密性が求められる構造物ではその性能が低下していることを示していると思われます。また、エフロレッセンスが発生すると構造物の美観が大幅に低下し、さらにひび割れ部では鋼材腐食による耐久性の低下も問題となります。また、繰返し荷重を受ける道路橋では、エフロレッセンスが確認されたひび割れ部では、繰返し荷重によるひび割れ面の擦磨き作用が促進され、疲労の進行が速いことが指摘されています。大きな衝撃荷重を繰返し受ける桟橋の床版では、エフロレッセンスを伴ったひび割れがあると、塩害と疲労が複合して早期に陥没などの事故を発生させることが有ります。
 
 対策においては、エフロレッセンス自体は構造物に大きな影響を及ぼさないため、エフロレッセンスの要因となったひび割れや水分の移動による構造物の性能低下を回復することが主要な目的となります。例えば、繰返し荷重や過大な荷重が原因となってひび割れが発生し、雨水などの浸透によってエフロレッセンスが発生している場合には、作用する荷重に対する安全性能や使用性能の回復が主要な目的となります。一方、水密性が求められる構造物においては、漏水を止めることが主要な目的となります。このとき、美観の回復も併せて行うことも必要で有るといえます。
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