急硬性セメント
急硬性セメントは、米国のPortland Cement Associationで開発されたもので、Regulated Set Cementと呼ばれていますが、我が国に技術導入されて製造されたものは、「ジェットセメント」という商品名で販売されています。
超早強ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメントに比較して鉱物組成としてのC2S(ペリット)を少なくし、C3S(アリット)を多くして強度発現を速くしているのに対して、ジェットセメントは、鉱物組成としてはアルミン酸カルシウムを多くしていますが、C3Aの形ではなく、カルシウムフルオロアルミネート(C11A7・CaF2)の形で、しかも多量に存在するようにしているのが特徴です。
したがって、アルミナセメントのように転移によって強度低下することがなく、安定しています。しかし、ジェットセメントはポルトランドセメントと同様、キルン法で焼成したカルシウムフルオロアルミネートを含有するクリンカーを粉砕して製造されるセメントであり、セメント全体が急硬性セメントとして出来上がっているため、ハンドリングのコントロールが難しく、練混ぜ水の注水後徐々に反応し、スランプダウンが生ずるため、60分程度の施工時間(ハンドリングタイム)を必要とする補修・補強工事には、適さない面がありました。
現在では、早強ポルトランドセメントに電気炉で焼成した非晶質カルシウムアルミネート系急硬材(C12A7)を添加混合したタイプの急硬性セメントも使用されています。前述の超早強ポルトランドセメントが24時間で10N/mm2以上の強度を発現するので、One-day Cementと呼ばれているのに対して、急硬性セメントは1~3時間で10N/mm2以上の強度を発現するので、One-hour Cementと呼ばれています。
早期に強度発現を必要とする補修・補強工事や緊急工事には、アルミナセメントに代わって広範囲に使用されるようになってきています。