本文へ移動

たわみ

 鉄筋コンクリート部材のたわみとは、主に水平部材に荷重が作用したときの変形量を表すもので、次節に示す変形の一つです。 たわみには、作用する荷重の大きさとそれに抵抗する部材の剛性やスパンの大きさが大きく影響します。一般にたわみが問題となる荷重としては、荷役車両、自動車荷重、列車荷重、群集荷重などの活荷重と設備や部材自体の死荷重です。部材の剛性に関しては、近年開発が進んでいる高強度のコンクリートや高強度鉄筋を用いることによって、部材断面がますますスレンダーになり剛性が低下する傾向にあります。また、鋼性の低い部材は供用中に多数のひび割れが発生し、部材の剛性が一層低下してたわみが大きくなることが有ります。
 
 長期間持続する荷重によるたわみの場合には、初期の弾性変形だけでなく、クリープによるたわみが累加されます。その外にも、部材の中で不均一な温度変化や乾燥収縮を受ける場合にもたわみが増加することが有ります。
 
 たわみが問題となる部材としては、橋梁の上部工、舗装、建築物の床スラブなどが挙げられます。鉄道橋の上部工では、たわみが大きくなると軌道に狂いが生じて列車の走行安全性に大きな影響を与えるため、スパン中央のたわみ量をスパン(L)と車両の走行条件に応じてL/700~L2500に制限されています。一方、道路橋の上部工ではこのような限界値はありません。ただし、厳しい繰返し荷重を受ける道路橋の床版では、活荷重作用時のたわみが大きいと、床版の疲労劣化が進むことから、必要な剛性を得るために床版の支間と大型車の交通量に応じて最小部材厚が設定されています。舗装コンクリートでは、荷重条件やコンクリート自体の剛性のほかに、路床・路盤の支持条件がたわみに影響します。(社)土木学会「コンクリート標準示方書」[舗装編]では、舗装のたわみの限界値を道路(自由端部)0.75mm、空港(中央部)1.25mmと規定されています。
 
 建築物の床スラブでは、たわみ量によって表-1に見られるように、劣化度が区分されています。たわみに対する対策としては、作用する荷重を低減するか、部材の剛性を高めための補強を行う必要が有ります。
表-1 床スラブの劣化度の区分
TOPへ戻る