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膨張材

補修・補強工事用のコンクリートやモルタルは、既設コンクリートと強力に接着するものであることが必要であり、そのためには「硬化収縮や乾燥収縮が小さくなければならない」のが一般的です。
 
膨張材は、外力によらないセメントの水和反応、硬化体中の水分移動、硬化体の温度変化などにより生ずる体積変化を低減する目的で使用される混和材であり、JIS A 0203-1999「コンクリート用語」では、“セメント及び水とともに練り混ぜた後、水和反応によってエトリンガイト(3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O)(CSA系)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)(石灰系)などを生成し、コンクリート又はモルタルを膨張させる混和材(expan-sive additive)”と定義されています。これら膨張材の組成による化学反応式を表1に示します。

表-1 膨張材の組成による化学反応式

 
また近年では、これまでに比較して少量にて同等の効果が得られる膨張材として、エトリンガイト・石灰複合系の膨張材も提案されています。
 
我が国の膨張材は、アメリカ、ヨーロッパなどにおけるように膨張セメントとして使用するのではなく、混和材として使用するため、膨張率の制御・管理が容易であり、収縮補償の目的ばかりでなく、膨張力を積極的に利用したケミカルプレストレストコンクリートにも幅広く適用されています。JIS A 6202:1997「コンクリート用膨張材」に規定される膨張材の品質を表2に示します。

表-2 コンクリート用膨張材の品質

硬化した膨張コンクリートの膨張特性と圧縮強度特性について、図1に単位膨張材量と無拘束膨張率との関係を、図2に最大膨張率に及ぼす単位膨張材量と拘束鉄筋比との関係を、単位膨張材量と圧縮強度及び拘束膨張率との関係を図3に示します。
 
単位膨張材量の増加に伴い膨張率も増加し、単位膨張材量は膨張率と良い相関を示すことが認められており、拘束鉄筋比が0.28~2.8%の範囲では、最大拘束膨張率の対数と単位膨張材量との関係は、ほぼ線形にあります。また、単位膨張材量が増加するにつれて、拘束膨張率は増加しますが、無拘束状態で養生された膨張コンクリートの圧縮強度は、単位膨張材量が30kg/m3程度であれば通常のコンクリートとほぼ同程度の強度を示し、膨張率がある程度大きくなると低下します。
 
これは膨張コンクリートを自由に膨張させるとコンクリートの組織が弛緩し、その結果として強度低下を引き起こすためと考えられます。しかし、鉄製型枠による拘束下での強度試験結果によると、膨張率が大きくても無拘束状態のような強度低下は見られず、通常のコンクリートとほぼ同程度の強度を示し、膨張が拘束されることによりコンクリートの組織が緻密に保たれ、強度低下はしないのです。
 
膨張材の用途としては、①現場打ちコンクリートにおける収縮補償コンクリートへの適用、②工場製品におけるケミカルプレストレストコンクリートと収縮補償コンクリートへの適用、③既設コンクリート、鋼管、岩盤などで形成される内部空間に打ち込む充填コンクリートへの適用、が挙げられます。

図-2 単位膨張材量と拘束鉄筋比の関係

図-3 単位膨張材量と圧縮強度、膨張率の関係

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