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変形

 変形には弾性変形のように短期間でもとに戻るものと、長期に渡って継続するものがあります。短期でもとに戻る変形の一つにたわみがあり、これについてはたわみを参照して下さい。したがってここでは、コンクリート構造物に生じる長期にわたる変形について考えてみます。

発生要因

 長期にわたるコンクリート構造物の変形には、外部から与えられる強制的な変形と、コンクリートの性質に起因する変形が有ります。
 
 外部から与えられる強制的な変形には、基礎地盤の沈下・移動、地山の変形が有ります。荷重についても、これが過大な場合には変形が長期にわたって残留することが有り、これも外部から与えられた変形の一つです。これらの例としては、たとえば基礎地盤が圧密沈下や地下水のくみ上げによる地盤沈下を起こし、その沈下量や沈下速度が原因となって構造物に大きな変形を発生させる場合が有ります。河川構造物の場合では、基礎地盤の洗掘が原因となって変形が発生する場合も有ります。また、トンネルやボックスカルバートなどの地中構造物では、周辺地盤が変形するとその変形が直接コンクリートを変形させることになります。一方、外力が作用する場合には、どのような構造物であっても変形は生じます。しかし、過大な変形が残るものとしては、たとえば落石や雪崩に対する防護工などが有り、衝撃的な荷重が作用することによって大く変形し、補修や補強などの対策が必要となる場合が有ります。これらの変形を受けると、コンクリートには大きなひび割れが発生するため、そのひび割れパターンによって変形の原因や移動の方向を推定することが出来ます。
 
 コンクリートの性質による変形では、温度変化、乾燥収縮、クリープが有ります。硬化後のコンクリート温度が、日射や火炎によって上昇すると、一般には7~13×10/℃の線膨張係数で膨張することになります。したがって、部材の両面で温度差があると、部材は温度差に線膨張係数を乗じた量の変形をしようとします。乾燥収縮については、コンクリート中の水分が蒸発することによってコンクリートが収縮する現象ですが、部材の両面で乾燥程度が異なると、温度差がある場合と同様に部材は変形しようとします。これらの変形は、その一部は外部からの拘束によって抑えられることになりますが、残りは変形として現れます。一方、クリープは持続荷重が作用したときに、時間の経過とともにひずみが増大する現象であり、荷重を除去してもしばらくの間は変形が残ることになります。

構造物へ及ぼす影響

 これらの変形のうち過大なものは、構造物の安全性能、使用性能に重大な影響を及ぼすことになります。また、それほど大きな変形ではない場合でもひび割れが発生すると、厳しい環境にある鉄筋コンクリート構造物では耐久性に大きな影響を及ぼす可能性が有ります。
 
 変形に対する対策としては、まず変形の原因を取除いたり、外力や強制的な変形に抵抗できるように構造物を補強するなどの対策を行う必要が有ります。その後、使用性能や第三者影響度、美観・景観に関する性能、さらには耐久性能など要求性能の低下に対する対策を検討する必要が有ります。
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