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断面修復工法

 浮き、剥離、剥落、内部欠陥、ジャンカ、塩害、アルカリ骨材反応等で劣化したコンクリートを除去した後に、除去した断面を修復する工法です。以下に示すおおよそ三つの種類があり、修復する断面の規模や施工性、経済性等を考慮して選定するのが一般的です。
 
 断面修復工を考える場合、意外に安易に考えられがちなのが、不良コンクリートを撤去する、いわゆるコンクリートのはつり(chipping)といわれている工種です。
 
 剥離や剥落を呈している、コンクリート構造物の不良部分を撤去するのは、有筋・無筋構造物に係わらず比較的容易に行えます。しかし、その他の要因で断面修復工を実施する場合、かなり慎重な作業となります。
 
 ① はつり取る範囲を決定する(事前調査等により、決定する)。
調査後の、マーキング
 はつり取る範囲は、不良部分を完全に取除く様になおかつ、健全部への影響を最小限に決定しなければなりません。特に最終的な仕上げが、コンクリート構造物の地肌を残すような場合、健全部を残そうとすると、はつりの形状が階段状になり、最終的な景観としてはあまり良いとはいえません。補修工事の全体的な目的や、仕様によって決定するのが、一般的といえます。
 
 ② 健全部を極力残すため、コンクリートにカッターを入れ、健全部への影響を少なくし、また最終的な補修材の充填を容易なものにする。
 
 カッターを入れる深さは、10mm程度は必要です。 あまり深いと、コンクリート床版等で鉄筋の被りが少ない場合は、鉄筋を傷つけてしまう場合があり、注意が必要です。またこうして健全部との縁を切ることで、余計なはつり時の振動で健全部を傷つける度合いを少なく出来る事にもなり、修復材を充填し補修完了後の耐久性にも、少なからず影響します。
 
 
コンクリートカッター施工状況
 ③ はつり作業は、作業中何度も浮きの確認をしながら行う。
 
 ただ、はつり落とせば良いという訳では有りません。通常、断面修復工法は、工事発注時の「設計厚み」が明記されています。しかし、範囲を決めて施工する以上、無駄にはつり取る(健全部を)割合は、当社の経験上3割程度は発生します。こういう場合、極力健全部は残す様な施工をします。 はつり作業時の浮きの確認は、絶対に必要です。特にはつり作業が進行するに従い、脆弱箇所の拡大が起きる場合が有ります。また、細かな浮きが残ったままになっている可能性も有るので、不良箇所を最大限に撤去するためにも、作業時の浮きの確認は必要不可欠なものになります。
 
補修部分の浮き、再補修が必要です。 大半は施工不良による場合が多いようです。そのなかでも当社の経験上、はつり不良によるものが、ほとんどです。
 ④ 有筋構造物の場合、鉄筋を利用し、補修材の再剥離を防止する。
 
 コンクリート構造物の補修については、有筋のものが大半を占めると思います。こういう場合は、「設計厚み」の範囲に出てくる鉄筋については、その裏側まではつり取り、修復材を充填した時に「引っ掛かり」を設け、経年の再剥離を極力防止する施工をします。もし、鉄筋が無い場合は、アンカー等を打設し、鉄筋等を結束し、補修材を充填するのもひとつの方法です。
 
はつり作業が、終了した状態
 適当にはつり、適当に補修材を充填しただけの断面修復工法は、何年か後に必ず再剥離等の障害を引き起こします。水分等に触れ、常時湿気の有る箇所については、更に顕著になってくるので、あまり触れられる機会は有りませんが、はつり作業は重要なポイントです。
 
 以上、人力施工でのはつり作業の注意点、重要性を説明しました。しかし最近では、人力でのはつり作業に代わり、機械(ウォーター・ジェット)によるはつり作業も、一般化してきています。ただ、機械自体の損料がまだまだ高額で、仮設備が大規模なものとなるため、施工単価は人力に比較すると、かなり割高なものになります。しかし、人力施工に比べ利点も多いため、これからの主流になっていくでしょう。
 
ウォータージェット施工のはつり面。 鉄筋の裏側まできれいにコンクリートが取れています。また、はつり面が均一で、適度に荒く、理想的な仕上がり。
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